カキナグラレタモノ

だらだらと、つらつらと、カキナグッタモノをここに載せて供養していきます。

枯れている人

枯れている人

 

 

 

枯れた。

私は枯れている。

水が欲しいか?

要らない

・・・と、思う

水をくれる人は多分望めない。

周りのまぶしさに照らされて、

私は枯れている。

周りに水分や養分を奪われて、

私はここに朽ちている。

こんなことを言ってはいるが、

詩的なことをつらつらと述べてはいるが、

いわゆる逆説というやつだ。

天邪鬼というやつだ。

かまってちゃん。

端的に言おう。

うん、

愛が欲しい。

嫉妬だ。

いや

SHITだ。

ダジャレか。

こんなくだらないことを言っているうちに

今日も就寝時間。

肥料をいただこうと溜め録りした連ドラも

一話を見て

やめた。

あり得ないシンデレラストーリーを見て

絵空事だと鼻で笑う。

いや事実絵空事なのだが。

むしろ鼻で笑われるべきは私なのだが。

この画面が映し出す眩しさは

奮発して買った新型テレビのせいだと思いたい。

奮発して買ったものを邪険に扱うとは

機械さえ邪険に扱え得るとは

いよいよ私も終わりかもしれない。

テレビを消し、ベッドに潜る。

安心する。

シェルターのようだ。

ははは、ここにいる限り私は無敵だ。

なんて思う。

核爆弾の光さえ防ぐことができる気がする。

 

 

 

 

 

日が昇る。

核爆弾の光さえ?

日光に負けた。

完敗だ。

三匹の子豚のどの兄弟よりも低能な自分に呆れる。

布団一枚でオオカミなんか怖くないって

残念な子です。

いやしかし日光、侮れん。

まぁ太陽そのものと核爆弾を比べたら・・・

ん?どうだろう

文系の私にはそれすらわからない。

とにかく、まぶしいんだってば。

目をこすりながら洗面台へと向かう。

鏡に映る自分と目が合う。

なんだっけ、

鏡の前で「あなたはできる」って10回言うとか

笑顔の練習をしてみるとか

いいからはよ歯を磨け。

そういえば鏡も目に届いてる”光”なんだよなぁ

ちっとも眩しくない。

自分が眩しいわけないか。

朽ちてるんだもの。

むしろ憐れんじゃうね。

職場に向かおう。

 

 

自転車をこぐ。

通学途中の高校生たちが見える。

ふむ、自分もこんな青春を過ごしていたのだろうか。

・・・過ごしてた。思いのほか過ごしていた気がする。

やはり嫉妬なのか。

妬み、嫉み、和民。ビールのみてぇ。

枯れてるなぁ

眩しい、眩しい、まぶたが欲しい。

略して眩しい。

いや、あるけど。

照らされて私の影は一段と濃くなった気がした。

日時計になれば、少しは存在意義が生まれるかも。

粗大ごみでもなれるわ。

むしろ動かない分粗大ごみのほうが助かるわ。

まずい、この証明は粗大ごみ以下という解を導く。

ふと、気づく。

人をひきかけていた。

危ない危ない。

いくら終わっている人間だからと言って

終わらせる人間になってはいけない。

前輪の向きを変え、漕ぎ出す。

(「よわったなぁ」)

不覚、不覚。

聞こえてしまった。

くそう。

聞こえてしまっては聞くしかない。

「How are you?」

と耳にして

「。。。」

と答えるのは正しくない。

少なくともテストならバツだ。

減点。

赤点。

私、落第生。

あーあ。

「どうかしたんですか?」

聞く、一応。

早い話が落し物をしたらしい。

ふん、私も色々落し物をしてきたぞ。

気づいてないうちにな。

男を見て、杖とサングラスに気付く。

「目が、見えないんですか?」

デリカシーもどこかに落としてました。

(男はええ、まぁと答える)

さっきもここでひかれかけ、ブレーキ音で驚いた拍子に

どこかに落としたらしい。

なにやらたいそう大事にしてきたお守りらしく

ひどく落ち込んでいた。

かわいそうだとは思ってます。

それくらいの心は多分まだ残ってます。

誰にアピールしたいんだ。

周りを見渡す。

あっ

見つけてしまった。

・・・川の中に。

器用に木に引っ掛かり、ぷかぷかと漂っている。

あらまぁ、また器用に。

しかし、なんか挑発してないか?

私を試そうってのか。

おお?

いや、お守りにガンとばすって、

野蛮人か。

なんなんだ、この状況

これで無視して出勤したら私は悪人か?

・・・極悪だな。

くそ。くそ。くそ。

一話だけ見たドラマなら男女逆だったはずだぞ。

女が男を助けるところから始まるシンデレラストーリーなんてない。

いや、そもそも、ここ、現実だし。

絵空事だ、あれは。

架空。フィクション。夢物語。

憧れないわけではないけどさ。

シンデレラの作者も

私と同じくらい現実にうんざりしてたんだろうなぁ。

そうか、私は舞台の上の人ではなく、

外側にいる人だったのだな。

で、私はこれからシンデレラストーリーとは別のスピンオフ作品として

あれ取りに行くのか。

しかし、川の中ですよ。

しかも取りに行こうとしたら、土手で靴汚れますよ。

「私、濡れると力が抜けてしまうので、取りに行けません」とか言ってみるか。

頭アンパンか。

いやぁアンパンさんなら構わず突っ込むだろうなぁ。

かっこいいなぁ。

人助けをするまでにここまで考える自分はやっぱり醜いのだなぁと思う。

酷い話だが、この男の人が私を見れなくてよかった。

・・・決めた。

「ちょっと待っててください。」

(私はがさがさと橋の下へ降りて行った)

男の心配する声が上のほうから聞こえる。

そこに居ろ。手間を増やさないでほしい。

びしょ濡れのお守りをとる。

ふー。

普通のお守りだな。

うん。別に妖精とか、魔法使いとか出てこない。

ん?

なんだ。

ストッキング伝線してやがる。

あー、コンビニよらなきゃ。

お守りを渡す。

男が涙を流しながら感謝をしている。

やめてくれ、恥ずかしすぎる。

周りの人見てるって、

やめて。

いいから、お礼とか。

ぱっと顔を上げると

男は満面の笑みを浮かべていた。

満面の笑みってこういうことなんだなと思うくらいに。

素直に素敵な笑顔だと思ってしまった。

この人、練習もしたことないはずなのに。

あれ。

眩しくない。

最近、笑顔とか、笑い声とか、幸せを連想させるものは

眩しかったはずなのに。

心地よいし、正面から受け止められる。

自然と、顔も緩む

そんな自分に照れて足元を見る。

ストッキングが破れている。

これか。

この向けられた笑顔の対価をきちんと払ったからか。

だから

過不足なくこの笑顔を受け止められる。

「どういたしまして」

答えて私は自転車にまたがる。

 

 

 

 

ストッキングは、そのままにしておこう。